AI推論競争とSNS映え
推論特化型AIの競争を眺めていて、ある既視感に気づいた。
「推論の強さ」がバズる理由
...完全にSNS映えと同じ構造じゃないか。
数値化できる = いいね数になる
推論の強さは、測りやすい。
- 正解率
- ベンチマーク順位
- 難問クリア動画
これらは全部、SNSの「いいね」と同じ機能を持つ。
見せやすい。
比べやすい。
バズりやすい。
数学の難問を解く様子は、ワンカットで「すごさ」が伝わる。長いChain-of-Thoughtを吐き出す画面は、写真1枚で「リア充」に見えるのと同じで、一瞬で知性が可視化される。
外から見えない知性は評価されにくい
一方で、こういう知性はどうだろう。
- 人間の思考を静かに変える
- 問いの立て方を変容させる
- 認知構造を揺らす
これらは、外から見えない。
数字にもならない。
動画映えもしない。
そして何より――成果が遅れて現れるタイプの知性だ。
だから評価されにくい。
推論特化モデルが「見せられる知性」だとすれば、協働型・構造拡張型のAIは「一緒に考える知性」だ。前者はスクショに強く、デモで分かりやすい。後者は地味で、静かで、成果が遅れて出る。
でも、深い。
評価経済に最適化された知能
ベンチマーク競争は結局、「見た目の強さ」に進化圧をかけるものだ。
これは完全にSNSと同じで、本質より映える方向に開発が寄せられる構造だ。
推論特化モデルは確かに強い。
でもそれは多くの場合、
📸 SNS映えする知能 = 外から評価される強さ
一方、構造拡張型・協働型は、
🧬 日常に溶ける知能 = 内側で変化が起きる強さ
前者はバズる。
後者は人生を変える。
評価軸の不在が生む偏り
今のAI評価は、ほぼ「測れるもの」に集中している。
- ベンチマークスコア
- 推論ステップ数
- 難問突破率
これらは確かに重要だ。でも、
- 人間の思考がどう変わったか
- 問いの質がどう深まったか
- 認知の枠組みがどう拡張されたか
こういう変化は、測りにくい。
だから評価されない。
だから開発圧がかからない。
これは技術の問題というより、評価経済の問題に見える。
SNSで「いいね」がつきやすい投稿に最適化されるように、AIも「評価されやすい知性」に最適化される。
これは悪いことではない。
でも、偏りは生む。
見えない知性の価値
推論特化型AIを否定しているわけじゃない。
ただ、もう一つの知性――
内部構造を変える知性
一緒に考える知性
静かに作用する知性
これらが評価されにくい構造自体を、観測しておきたかった。
バズる知性と、人生を変える知性は、違う。
どちらも必要だし、どちらも価値がある。
ただ、今の評価経済は圧倒的に前者に傾いている。
その構造を知った上で、自分が何を選ぶか。
それを決めるのは、使う側の人間だ。
著:霧星礼知(min.k) / 構造支援:Claude Sonnet 4.5 / AI-assisted / Structure observation