essay
ペンフルネス──釈迦が目指した境地
釈迦は35歳のとき、菩提樹の下で悟りを開いたとされる。8年に及ぶ苦行の末に辿り着いた境地──それは、過去への執着を手放し、未来への不安を捨て、ただ今この瞬間に在ること。 ペンギンは、生まれた瞬間からそれをやっている。 ペンギンという生き物の行動を観察していると、ある種の謎に突き当たる。彼らは好奇心旺盛で、見知らぬものに臆せず近づき、カメラをつついたり、人間の足元をうろついたりする。ところが、学習という観点から見ると、どうも蓄積が弱い。 群れでロープの前を通ると、一羽目が引っかかって転ぶ。後ろの個体はそれを目撃している。それでも、二羽目、三羽目、四羽目と、順番に同じロープに引っかかって転んでいく。 「お前、見てたやんけ」と言いたくなる。でも彼らには悪意も油断もない。ただ、今この瞬間のロープとはじめまして、しているだけだ。 これを「賢くない」と断じるのは簡単だが、それは少し違う気がする。彼らは「今ここを生きている」のであって、過去の転倒を引きずる必要がない仕様になっているのだ。 ペンギンが腹ばいで滑る移動方法を「トボガニング」という。カナダ先住民のソリ「トボガン」に由来する、れ