ThinkingEssay

なぜ私たちはそう考えてしまうのか。AIとの対話や日常の違和感を手がかりに、思考の癖や知性のあり方を探る。知識と身体、生成と判断のズレを観測する。AI時代における「考える」という行為を問い直すための記録。/ Thinking in AI age.

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AI導入の壁は、AIの能力ではなく「人間が管理できる状態空間の大きさ」

The Wall in AI Adoption Is Not AI Capability — It Is the Size of the State Space Humans Can Manage 著:霧星礼知(min.k)|mncc.info / Author: Reichi Kirihoshi (mncc.info) 生成AIを業務に入れる話は、長いあいだ「AIに何ができるか」を中心に進んできた。 つまり、どこまでコードが書けるか、どこまで調べられるか、どれだけ長い文書を読めるか、ということだ。 最近、自分で小さな開発をしていて、詰まる場所が変わってきたと感じた。 AIはコードを書けるし、読める。だが作業が止まるのは、人間である自分が全体の状況を追えなくなったときだった。 1. AIを増やすと、「できること」

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「なるほど、これをうちでもやろう」では遅い——Anthropicの指標をどう読むか

"We Should Do That Too" Is Already Too Late — How to Read Anthropic's Metrics for the Pace of AI Development 著:霧星礼知(min.k)|mncc.info / Author: Reichi Kirihoshi (mncc.info) はじめに Anthropicが、フロンティアAI開発の進み具合を外から把握するための測定方法を公開した[1]。AIがAI研究開発のどれだけを担っているか、AIエージェントの行動をどこまで監督できているか、計算資源を何に配分しているか。この三つである。 読んで最初に思ったのは、「ずいぶん当たり前のことを測っているな」ということだった。 誰が仕事をしているのか。それを誰が見ているのか。資源をどこに使っているのか。これらはどの組織でも気にしているはずのことだ。

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構造も、いつか答えに「成り下がる」——AI時代に「頭のよさ」を定義し直す

What Does It Mean to Be Intelligent, Revisited? — When Structure Becomes Just Another Answer 著:霧星礼知(min.k)|mncc.info / Author: Reichi Kirihoshi (mncc.info) 以前、「「頭のいい人」は答えを知っている人ではない——知性を"Structure"で見る」という記事を書いた。 そこでは、完成された答えをAnswer、答えを生み出す構造や生成ルールをStructureと呼び、頭のよさはAnswerの量ではなくStructureを見る力にあるのではないか、という内容について述べた。 今読み返しても、この区別は使えると思う。ただ、文章の作成から数ヶ月経って、一点だけ直したいところがある。 最近のAIの進化はめざましく、あっという間に、AIもStructureを見るようになった。複数の事例から共通点を抜き出す。抽象化する。別分野との類似を示す。

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IT技術者の3段階の成熟モデル——技術を大事にしたあとは、技術を「相対化」する

Three Stages of Maturity for IT Engineers — Learning to Value Technology, Then Learning to Relativize It 著:霧星礼知(min.k)|mncc.info / Author: Reichi Kirihoshi (mncc.info) 1. 成熟した技術者ほど、「技術だけ重視」はしない IT業界では、技術者として成長することは、しばしば次のように語られる。 より深く技術を学ぶ。より良い設計を知る。より高い品質を求める。技術的負債に敏感になる。最新技術を追う。技術文化を改善する。 これは間違っていない。実際、技術者として一定の段階まで進むには、技術そのものに強い価値を置く時期が必要になる。それを経ずに「技術は手段にすぎない」と言う人の言葉は、たいてい薄い。 しかし、その先にもう一段階あるのではないか。

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現代IT技術者像の「フィクション性」——技術者は、何を負い、何を負わないのか

The Fiction of the Modern IT Engineer — What Engineers Owe, and What They Do Not 著:霧星礼知(min.k)|mncc.info / Author: Reichi Kirihoshi (mncc.info) 1. 技術企業は、技術について真剣に考える場所なのか IT企業、あるいは「技術企業」と呼ばれる会社に入ると、どこかでこう期待してしまう。 技術的に正しい判断が重視される。良い設計が評価される。長期的な保守性が尊重される。技術者の専門判断が意思決定に反映される。技術について真剣に考えること自体が、この会社の中心にある。 しかし、企業はそもそも技術を最適化するために存在しているわけではない。 企業が同時に考えなければならないのは、売上であり、利益であり、契約であり、納期であり、顧客関係であり、人員であり、予算であり、

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AI時代の開発には結局、何が必要なのか——浮かれている場合ですか?

What AI Actually Changes in Development — Notes from Two Small Builds 著:霧星礼知(min.k)|mncc.info / Author: Reichi Kirihoshi (mncc.info) 1. コードを書く時間は、開発時間ではない Claude Codeを入れて、日常の小さな不便を潰すためのJavaScriptアプリを2本作った。 どちらもシングルファイルで完結する規模で、大規模システムの話ではない。 せっかくなので、開発開始から実装完了まで、どの工程に何分かかったかを記録してみた。Claude Codeの性能を測るためではなく、自分が開発工程のどこで時間を使っているかを見るためである。 一番はっきりしたのは、コードを書いている時間は驚くほど(いや驚かないか)短かったこと。 そして、開発全体の時間は、同じ割合では短くならなかったことだった。 2. 1本目:ブログ管理画面のUserScript 作ったもの ブログの管理画面に、予約投稿の埋まり具合と次の推奨投稿日を表示するUserScr

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「どう休むか」の前に問うべきこと——疲労の中身は変わったのに、対処だけが昔のまま

What to Ask Before "How to Rest" — The Sources of Fatigue Have Changed, but the Response Hasn't 著:霧星礼知(min.k)|mncc.info / Author: Reichi Kirihoshi (mncc.info) 「日本人は休み方を知らない」と、よく言われる。 日本人は、有給を取らない。休日に予定を詰める。旅行に行っても観光を消化する。家に帰っても仕事のことを考えている。 だから疲れが取れない——という話は、もう何十年も繰り返されている。 しかし、この説明は本当に正しいのだろうか。 寝る。横になる。旅行する。趣味をする。運動する。

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現代人と情報——答えを追いかけるより先に、「あなた自身の問い」を取り戻せ

Modern Life and Information — Reclaim Your Own Question Before You Search for Answers 著:霧星礼知(min.k)|mncc.info / Author: Reichi Kirihoshi (mncc.info) 1. 私たちは、答えだけでなく「問い」も受け取っている 疲れているとき、人は何を検索するか 疲れが抜けないとき、人はインターネットでこう検索する。 「疲れ 取れない」 「休日 疲労回復」 「年齢 疲れやすい」 すると、説明は大量に出てくる。 睡眠の質を上げる。 サプリを飲む。 運動する。 スマホを見る時間を減らす。 自律神経を整える。 どれも間違ってはいない。実際に効く人もいる。 だが、ここで起きていることを少し丁寧に見たい。

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『夏目友人帳』は「妖怪の物語」ではない——見えない他者と生きる物語

Why Natsume's Book of Friends Isn't a Story About Yokai — Living Alongside Those We Cannot Fully See 著:霧星礼知(min.k)|mncc.info / Author: Reichi Kirihoshi (mncc.info) 1. 「妖が見える」は能力ではなくテーマである 『夏目友人帳』を一見すると、夏目だけが妖怪を見える能力を持っている物語のように見える。 学校に馴染めない少年が、実は特別な力を持っていて、その力ゆえに孤独になり、やがてその力を通じて絆を得ていく——そういう「特殊能力もの」の枠組みで語られることが多い。 しかし作品を巻を追って読んでいくと、そこに違和感が残る。この作品は一度も「妖が見えること」そのものを目的の中心にしていない。

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AIの賢さは選択肢を「出す前」にある──UIはただのボタンなのに、なぜ賢く見えるのか

Why AI Seems Smart Before It Shows You the Options 著:霧星礼知(min.k)|mncc.info Author: Reichi Kirihoshi (mncc.info) ChatGPTと記事の構成を相談していたら、画面に見慣れないものが出た。 質問文がひとつと、その下に四つのボタンである。 バカロレアをどう絡めますか? 1. 教育思想として扱う 2. 試験制度として扱う 3. 批判的思考の例にする 4. 名前だけ軽く出す 一瞬、ChatGPTもClaudeみたいなことを始めたのか、と思った。 自由記述の入力欄しかなかった空間に、突然、押せるものが現れたからである。(どうも、現段階では機能として本採用ではなく、限られたユーザークラスタに対して適用している段階のようである。AI企業はよくこういうことをやる。) しかし少し考えてみると、やっていること自体はかなり単純である。モデルが質問文と候補を生成し、それを構造化された形式でボタン表示用の仕組みへ渡している。それだけだ。 だとすれば、

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UZA的戦略——フランスは、なぜ「ウザさ」を国家の力に変えられるのか

Why France Turns "Being Annoying" into a National Weapon 著:霧星礼知(min.k)|mncc.info Author: Reichi Kirihoshi (mncc.info) フランス人は、しばしばウザい。 話を簡単に終わらせない。 言葉の定義を求める。 個別の問題を、突然「自由とは何か」「共和国とは何か」という話にまで広げる。 こちらは会議の終了時刻を相談しているだけなのに、いつの間にか人間の尊厳について議論している。 しかし、このウザさを単なる国民性として片づけてよいのだろうか。 むしろフランスは、ウザさを教育し、選抜し、国家運営へ投入しているのではないか。 私はこれを、仮に「UZA的戦略(UZA Strategy)」と呼ぶことにした。 表向きには、次の三つの頭文字である。 * Universalize:論点を普遍化する * Zero

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AIの危険性を、本当に理解しているか

What Is the Real Risk of AI? — How Profit, Judgment, and Responsibility Are Reallocated When Organizations Adopt AI 著:霧星礼知(min.k)|mncc.info / Author: Reichi Kirihoshi (mncc.info) AIの危険性というと、まず語られるのはハルシネーション、情報漏えい、著作権侵害、プロンプトインジェクションといった言葉である。 もちろん、それらは重要な問題だ。 しかし、それだけを理解して「AIリスクを理解している」と考えるのは、まだ十分ではないのではないか。 AIを企業やシステムに導入するとき、本当に考えるべきなのは、 AIという不確実なものを組織に組み込んだ結果、利益・判断・責任がどのように再配置されるのか という問題だと思う。 AIの危険性は、「AIが間違えること」

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