K-POPが「上手さ」と引き換えに失ったもの——90年代韓国音楽の自由化と、その先にあった「工業化」
What K-pop Traded for Its Skill — The Liberalization of 1990s Korean Music and the Industrialization That Followed
著:霧星礼知(min.k)|mncc.info / Author: Reichi Kirihoshi (mncc.info)
最近のK-POPは、とにかくいろいろなことが上手い。
歌が上手い。ダンスが上手い。映像も美しい。楽曲は数十秒ごとに聴き手を離さないよう細かく設計されている。
それなのに、時々ひどくつまらない、と感じてしまうのはなぜだろう。
この違和感を「昔の音楽の方が良かった」で片づけると、たぶん何も見えなくなる。
今のK-POPは、音楽を上手く作る技術を極めた産業である。問題があるとすれば、極めたことそのものではなく、極める過程で、上手く作ることとは違う種類の能力を育てる余地が小さくなったことではないか。
ここに至るまでに、業界には三十年ある。
以下、歴史と産業構造については出典を示すが、そこから先の「つまらなく聞こえる」という判断は、私自身の聴取上の仮説として書いていく。
1. 90年代の韓国音楽は、自由になることから始まった
まず、業界の歴史から順に見ていこう。
音盤を出す前に「審議を受ける」、という前提
1990年代半ばまで、韓国で音盤を制作するには公演倫理委員会(公倫)の事前審議を受ける義務があった。審議を通っていない音盤は販売できず、違反すれば刑事処罰の対象となり、音盤や制作機材の没収まで規定されていた[1]。
作り手にとって、何を歌えるかは制作の前に決まっていた。この制度が生きているうちは、音楽的な冒険は最後に必ず審議の机の上で止まるのである。
90年代は、1987年以降の民主化の中で、文化・芸術の自由度そのものが広がっていた時期でもある。90年代初頭の韓国大衆音楽の変化は、突然変異ではなく、社会全体の変化の一部として起きているのである[2]。
ソテジワアイドゥル
1992年から1996年まで活動したソテジワアイドゥルは、ソ・テジ、ヤン・ヒョンソク、イ・ジュノの三人組で、ラップ、ヒップホップ、オルタナティブロックといった当時の韓国大衆音楽の中心になかった要素を持ち込んだ[3]。
ロアルド・マリアンカイは、この現象を「初期のK-POP」としてではなく、1990年代韓国における個人主義の台頭として論じている。音楽だけでなく、服装、言葉づかい、既存の芸能界との距離の取り方まで含めて、若者文化の様式そのものが更新された[4]。彼らの前に韓国のロックやフォークの系譜がなかったわけではなく、複数の流れがあったうえでの転換点だった[5]。
彼らを象徴的にしたのは、ヒット曲より事前審議との衝突のほうかもしれない。1995年、4集収録の「時代遺憾(シデユガム)」について、公倫は歌詞が過激で現実を否定的に描いているとして不可判定を出し、修正を求めた。ソ・テジは修正の代わりにボーカルを全部抜き、演奏だけを収録して抗議した[6]。
これは、PC通信上で公倫への抗議が広がり、ファンの署名運動が起き、当時の野党・新政治国民会議が党内に調査委員会を作るところまで進んだ。ちょうどフォーク歌手チョン・テチュンらが先に続けていた審議撤廃運動と重なり、1996年6月に公倫は廃止される。同年10月、憲法裁判所も、音盤の事前審議は憲法が禁じる検閲にあたるとして違憲と判断した[1:1][6:1]。歌詞の入った「時代遺憾」がシングルとして出たのは、その直後の7月である[6:2]。
この時代のラップやロックやダンスは、商品として最適だから選ばれたわけではない。既存の型から出るための道具として使われていた。ここが、後のK-POPとの一番大きな違いだと思う。
2. 自由化が、「工業化の材料」になった
こうして自由化は成功した。
若者向けのダンスミュージックは売れる。ラップを入れても売れる。ロックの要素を入れても売れる。歌だけでなく、ダンスやファッションまで含めて見せることに市場価値がある。
90年代の成功によって、次の世代の音楽産業が使える部品が一気に増えることになった。
そこへ1997年のアジア通貨危機が重なる。
この時期の韓国では、市場開放と経済危機を背景に、文化産業を経済的価値のある戦略産業として捉える見方が強まり、法制度と産業政策がそれに沿って組み替えられていく[7]。文化産業に限らず、従来型の大量投入による成長モデルから知識集約型産業へと重心を移す力が、社会全体に働いていた時期でもある[8]。
具体的には、金大中政権が1998年10月に「新文化観光政策」を発表し、2001年までに政府予算の1%を文化分野に充てると表明した。1999年2月には文化産業振興基本法が制定され、映画・出版・音盤・ゲーム・放送番組などを対象に、振興基金と税制支援、省庁横断の推進委員会が置かれた[9]。同じ時期に日本大衆文化の段階的開放も始まっている。
この時期、事務所の側も動いていた。SMエンタテインメントのイ・スマンは、感覚ではなく体系化された技術としての「文化技術(Culture Technology)」を掲げ、韓流を三段階に分けて説明している。第一段階は文化商品の輸出、第二段階は現地の会社やタレントとの合作、第三段階は現地に合弁会社を作りCTそのものを伝授して現地化する、という順序である[10]。ジョン・リーがK-POPを音楽ジャンルではなく韓国の経済的イノベーションとして扱うのは、この輸出志向の強さゆえだろう[11]。
ここで「政府と業界が最初から今のK-POPを設計した」と読むと、やや話が単純になりすぎる。並べた出来事は、それぞれ別の動機から起きているからだ。90年代の音楽的自由化、危機後に強まった文化産業への経済的関心、民間事務所の試行錯誤、海外市場への志向が重なった結果として、後から見ると一つの工業システムのように見える産業モデルができた、という順序だろう。
ここで皮肉なのは、90年代に型を壊すために使われたラップとダンスが、次の十年で売れる商品を作るための部品になっていったことだ。ソテジワアイドゥルのメンバーだったヤン・ヒョンソクが、解散の年にYGエンタテインメントを立ち上げている[3:1]。型を壊した側が、次の型を作る側に回ったのである。
3. K-POPが「極めた」もの
朴吉声は、K-POPを「創造性を製造する(manufacturing creativity)」仕組みとして分析している。国内のタレント発掘・育成・マネジメントと、欧米の音楽産業から調達したクリエイティブ資源、そして制作・パフォーマンス・流通が一つの工程として組み合わされている、という見方である[12]。
対象は楽曲だけではない。呉侑晶が論じるように、K-POPアイドルはイメージそのものを生産される存在であり、音楽以外の商品や消費を媒介する中心として設計されている[13]。現在の大手事務所は、グローバル資本と企業戦略の中に組み込まれた事業体でもある[14]。
制作工程で分かりやすいのは「ソングキャンプ」だろう。世界中から作曲家を集め、数日間の集中セッションで数十曲を作らせ、A&Rが候補を選び、韓国側で詞をつけて仕上げる[15]。ポピュラー音楽の作曲が一人で完結するものから複数の専門家による共同制作へ移行してきたことは、共同作曲を扱った研究でも整理されている[16]。SMのA&Rだった李成洙は、2000年代に海外の音楽出版社が主催するキャンプに招かれるようになり、その仕組みを韓国に持ち帰った人物として知られる[17]。実務の規模感は、年に三回から五回、一回あたり二十人前後の作家とプロデューサーを二、三週間集める、という証言がある[18]。
結果として、一曲のクレジットに複数の名前が並ぶのは普通になった。Red Velvetの「Happiness」は作曲・作詞に五人が関わっているし、aespaの「Next Level」は他アーティストの既存曲をリメイクし、四人の作曲家がクレジットされている[19]。
これは、商業主義が透けて見えるから悪い、という話をしたいのではない。これほどの規模で一定以上の品質を再現できる音楽産業はそう多くないだろう。K-POPは「上手く作る」という能力を、本当に極めたのである。
4. 上手さが飽和したところで起きること
ここから先は、私自身の聴き方の話になる。
最近のK-POPには強いフックの曲が多い。イントロで耳をつかみ、Aメロでも変化を入れ、プレコーラスで持ち上げ、サビで爆発させ、その直後に別のフックを置く。よくできている。
ただ、時々 「強いパーツが並んでいるだけ」に聞こえる曲 がある。Aの次にBが来る理由が、身体ではなく構成理論の側にあるように聞こえる。各パートは強いのに、通して聴いたときの快感が途中で切れるのである。
音楽の気持ちよさが身体と結びついていること自体は、研究の対象になっている。マリア・ヴィテックらは、グルーヴを「音楽を聴いたときに生じる、身体を動かしたいという欲求と快感」として扱い、シンコペーションの複雑さとの関係を実験的に調べた。結果は単純な右肩上がりではなく、中程度のシンコペーションのときに、動きたい欲求も快感も最も高くなった[20]。グルーヴの体験が運動系と報酬系の両方に関わることも、神経科学の側から報告されている[21]。ヤン・ストゥパッハーらは、この関係を予測可能性と意外性の「ちょうどよい場所」として整理している[22]。
これは「単純すぎても複雑すぎても気持ちよくない」という、経験的にはよく知られた話の裏づけにすぎない。名曲の条件を証明したものではないし、K-POPを評価するために行われた研究でもない。ただ、私が「変だけど気持ちいい」と言うときに指しているものが、まったくの気分の話ではない、という程度のことは言える。
上手いのに残らない、という状態は、技術の不足では説明できないのだ。
5. 身体で決めた音——Boney M.とORANGE RANGE
「気持ちいい曲」を考える時に思い出したのは、Boney M.とORANGE RANGEだ。
話はK-POPからは少し離れるが、お付き合い願いたい。
Boney M.の「Daddy Cool」(1976年)のイントロは、プロデューサーのフランク・ファリアンが鉛筆で自分の歯を叩いて出したリズム音である[23]。
理論からは出てこない音だ。誰かが試して、気持ちよかったから残った。曲そのものも、ベース、キック、掛け声、ボーカル、間の取り方と、要素は驚くほど単純なのに、反復しても身体が飽きない。「Rasputin」も同じで、分析はできるが、分析の前に快感がある。
ここで一つ、話を単純にできない事実がある。Boney M.は徹底したプロデューサー主導の企画だった。ステージで踊っていたボビー・ファレルは録音では歌っておらず、男声パートはファリアン自身が入れている[23:1]。「工業的な作られ方をすると身体感覚が薄くなる」という図式は、そのままでは成立しない。作られ方が工業的かどうかと、音が身体的かどうかは、別の軸にある。
また、ORANGE RANGEの「上海ハニー」(2003年)は、オリコン5位、24万枚あまりを売った曲である[24]。
私にはこの曲が、サビだけでなく一曲全体に快感ポイントが配置されているように聞こえる。複数ボーカルの声色が入れ替わり、掛け声とリズムの細かな変化が続き、サビを待たなくても小さな快感が絶えず発生している。
2007年の「イケナイ太陽」も同じ聞こえ方をする。作り手が理論上正しい位置を計算したというより、ここが気持ちいいと身体で判断したものを積み重ねたように聞こえる、というのが私の印象で、彼らが実際にどう作ったかを知っているわけではない。
この曲を含め、彼らの楽曲には当時から他曲との類似が指摘され、盗作かどうかの論争が長く続いた[25]。その評価をここで決めるつもりはない。ただ、引用の有無とは別の論点として、借りてきた素材を一曲として気持ちよくまとめる編集能力の高さは残る。素材をどこから持ってきたかと、それを自分たちの身体感覚で消化できているかは、分けて見ることができるだろう。
6. 「モジュール」として組み合わされる音楽
私が感じる「パーツ感」に近いところを、音楽学の側から扱った研究がある。
申鉉準は、2010年代以降のK-POPを「modular assemblage(モジュール的な集合体)」として分析している。従来型ポップスの線形的な楽曲構造を分解し、異なる音響的モジュールを組み合わせ、サウンドデザインを中心に再構成する。その工程に国内外の多様なクリエイターが参加する。文化的ハイブリッドやグローカル化という言葉で説明されてきたものを、制作様式のレベルで捉え直した議論である[26]。
強いAメロ、強いプレコーラス、強いサビが、それぞれモジュールとして組み合わされているように聞こえる、という私の感覚に対して、これはかなり直接的な補助線になる。ただし、申はそこから「だからK-POPはつまらない」とも「身体感覚が失われた」とも論じていない。モジュール的な制作は事実として指摘されているだけで、そこに不足を読み込むのは私の側の判断である。
その判断を書いておく。著者(霧星礼知)が仮に「気持ちよさの決裁者」と呼んでいる役割がある。一曲の中で、この展開を残すか捨てるかを、理屈ではなく自分の身体で最終的に決める人のことだ。
Boney M.にはファリアンがいた。だから多国籍の分業体制でも音が身体的だった。分業そのものが快感を薄くするわけではない。危ういのは分担の数ではなく、決裁の基準ではないか。世界中から集めた強いパートを持ち寄り、A&Rが候補から選ぶ工程では、選定の基準が「一番気持ちいいか」より「一番外さないか」に寄りやすい。外さないことを基準に選ばれた強いパーツは、単体では最高でも、つなぎ目に理由が生まれない。
これがK-POPでは、Aメロは最高、プレコーラスも最高、サビも最高なのに、通すと身体に残らない。技術が足りないのではなく、各パーツを強く作る技術が上がりすぎた結果、全体を身体でつなぐ工程が見えにくくなった。上手さの方向が偏った、という言い方が近いのではないだろうか。
7. K-POPが「育ててこなかったもの」
この見出しは産業統計上の事実ではない。K-POP業界が作家の身体感覚を育てていない、と示すデータがあるわけではないので、ここまでの話を通した私の仮説として読んでほしい。
育ってきたのは、「正解を再現する能力」である。
逆に、育ちにくかったのではないかと思うのは、
- 作り手固有のリズム感
- 妙な間
- クセのあるメロディ
- 理屈で説明しにくい展開
- 本人にしか判断できない「ここが気持ちいい」
- 失敗するかもしれない実験
- 少しダサいかもしれない雑味
といったものだ。
制作は高度にモジュール化され、品質を安定して再現するシステムが完成している[12:1][26:1]。一方で、音楽的な快感には身体運動と、予測からの適度な逸脱が関わることも知られている[20:1][22:1]。工業化は失敗率を下げる。予測からの逸脱は、その定義上、失敗率を上げる。両方を同時に最大化する仕組みは、まだ誰も持っていないのだと思う。
名曲には、普通なら捨てるはずの変な部分が残っていることが多い。鉛筆で歯を叩いた音のような、説明のつかない一箇所が、その曲を代替不可能にする。
8. それでも、次に育てていくものはある
2024年1月、aespaが「時代遺憾」をリメイクした。SMのリマスタリングプロジェクトの一環で、カリナはラッパーのBewhYとともにラップ制作にも参加している[27]。
事前審議と衝突した曲を、最も工業化された会社の第4世代グループが歌う。悪い話ではない。むしろ、歴史を自分たちの資産として扱えるだけの余裕がある証拠だろう。
ただ、1995年の「時代遺憾」が持っていたのは完成度ではなかった。通らないかもしれないものを、通らないまま出す判断だった。当時それを支えていたのは制度の外にいる作り手の意地で、今のK-POPにはその意地を必要とする場面がほとんどない。
歌とダンスをさらに上手くする余地は、もうそれほど大きくない。すでに極めた上手さの外側で、まだ言語化されていない身体感覚をどう育てるか。世界最高水準の育成技術を持つ産業がそこに手を出したら、何が出てくるのかは見てみたい。
参考文献
研究文献
- Lie, John. K-Pop: Popular Music, Cultural Amnesia, and Economic Innovation in South Korea. University of California Press, 2015.
- Kim, Suk-Young ed. The Cambridge Companion to K-Pop. Cambridge University Press, 2023.
- Maliangkay, Roald. "The Popularity of Individualism: The Seo Taiji Phenomenon in the 1990s." In Kyung Hyun Kim and Youngmin Choe eds., The Korean Popular Culture Reader, Duke University Press, 2014, pp.296–313.
- Shin, Hyunjoon and Pil Ho Kim. "Birth, Death, and Resurrection of Group Sound Rock." In The Korean Popular Culture Reader, Duke University Press, 2014.
- Pacheco Pardo, Ramon. Shrimp to Whale: South Korea from the Forgotten War to K-Pop. Oxford University Press, 2022.
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- Oh, Youjeong. Pop City: Korean Popular Culture and the Selling of Place. Cornell University Press, 2018.
- Goh, Josephine Yu Qin and Sheau-Shi Ngo. "An analysis of SM Entertainment's ownership structure amidst its global-local expansion." Media, Culture & Society, 2024.
- Shin, Hyunjoon. "K-pop as a Modular Assemblage: The Critique of 'Cultural Hybridity' and 'Glocalization'." Media & Society 33(4), 2025, pp.135–181. DOI: 10.52874/medsoc.2025.11.33.4.135
- 「공동 음악창작 특성에 관한 연구: 송라이팅 캠프를 중심으로」
- Witek, Maria A. G., et al. "Syncopation, Body-Movement and Pleasure in Groove Music." PLOS ONE 9(4), 2014, e94446. DOI: 10.1371/journal.pone.0094446
- Matthews, Tomas E., et al. "The sensation of groove engages motor and reward networks." NeuroImage 214, 2020, 116768.
- Stupacher, Jan, Michael J. Hove and Peter Vuust. "The Experience of Musical Groove: Body Movement, Pleasure, and Social Bonding." In Performing Time, Oxford University Press, 2023.
一次資料・報道・法令
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- 文化産業振興基本法(1999年、法律第5927号)解説、国家記録院 https://www.archives.go.kr/next/newsearch/listSubjectDescription.do?id=003620
- 「2000년대 초 한국 영화 정책의 특징적 경향」KCI https://www.kci.go.kr/kciportal/landing/article.kci?arti_id=ART001934168
- 「이수만 SM의 스타 현지화 전략으로 3차 한류 도전」韓国経済新聞、2011年6月19日 https://www.hankyung.com/article/2011061998921
- 「한류, 현재의 K-pop을 만든 CT와 미래를 열어갈 SMCU」ソウル大学アジア研究所 https://asiabrief.snu.ac.kr/?p=277
- The Dong-A Ilbo, "Global songwriters fuel K-pop songwriting camps," 2 February 2026.
- "'Composed in Sweden, recorded in Korea': K-pop production goes global", The Korea Times, 2026 https://www.koreatimes.co.kr/entertainment/k-pop/20260317/composed-in-sweden-recorded-in-korea-k-pop-production-goes-global
- "K-Pop Sound, American Style", KultScene, 2015 https://kultscene.com/k-pop-sound-american-style-marcan-entertainment-is-the-k-pop-production-k-pop-agencies-turn-to-interview/
- 「시대유감」「서태지와 아이들」韓国語版ウィキペディア
- "Seo Taiji and Boys" / "Lee Sung-soo" / "Happiness (Red Velvet song)" / "Next Level (Aespa song)" / "Daddy Cool (Boney M. song)" / "Shanghai Honey", Wikipedia
- 「에스파의 재해석한 '시대유감'」MKスポーツ、2024年1月15日 https://v.daum.net/v/20240115140903500
- 「에스파가 서태지 노래를?」CBSノーカットニュース、2024年1月 https://nocutnews.co.kr/news/6078959
- ORANGE RANGE「上海ハニー」(2003年)、「イケナイ太陽」(2007年)
- Boney M. "Daddy Cool"(1976年)、"Rasputin"(1978年)
☕️よかったらコーヒー一杯。 https://buymeacoffee.com/mink_obs
著:霧星礼知(min.k) / リサーチ・構造支援:Claude Sonnet 4.6、ChatGPT / AI-assisted / Structure observation
For international readers
K-pop is extraordinarily good at what it does. Vocals, choreography, visuals and song construction are executed at a level few music industries can match consistently. This essay traces how that came to be — the musical liberalization of 1990s Korea, symbolized by Seo Taiji and Boys and the 1996 abolition of pre-release censorship; the export-oriented industrial mindset that hardened after the 1997 Asian financial crisis; and the production system of trainee pipelines, global song camps and A&R selection that followed.
The argument is not that K-pop has become boring, nor that older music was better. Research describes what the industry built — Gil-Sung Park's "manufacturing creativity," Hyunjoon Shin's account of contemporary K-pop as a modular assemblage — and separately describes why bodies enjoy music at all, with groove research pointing to a sweet spot between predictability and deviation. Neither body of work concludes that K-pop has lost something; that reading is the author's own.
What the essay proposes is that industrialization lowers failure rates, while deviation raises them, and no one has yet built a system that maximizes both. Boney M.'s "Daddy Cool" — whose intro was made by its producer tapping his teeth with a pencil — shows that industrial production and physical, instinctive music are not opposites; what matters is who makes the final call on what feels good. In January 2024 aespa remade "Regret of the Times," the very song that collided with state censorship in 1995. What that song once carried was not polish but the willingness to release something that might not pass.
Keywords
K-pop, Seo Taiji and Boys, music censorship, 1997 Asian financial crisis, cultural industry policy, Culture Technology, song camp, A&R, modular assemblage, groove, syncopation, reproducibility, industrialization, Boney M., ORANGE RANGE, Korean popular music history
K-POP、ソテジワアイドゥル、事前審議、アジア通貨危機、文化産業振興基本法、文化技術、ソングキャンプ、A&R、モジュール的集合体、グルーヴ、シンコペーション、再現性、工業化、Boney M.、ORANGE RANGE、身体感覚、韓国大衆音楽史
脚注
韓国憲法裁判所 1996年10月31日 94헌가6 決定。旧「音盤及びビデオ物に関する法律」第16条は、音盤制作時に公演倫理委員会の事前審議を受ける義務を課し、審議を受けていない音盤の販売等を禁じ、違反者には刑事罰と音盤・制作機材の没収を規定していた。同種の判断は憲裁1997年3月27日 97헌가1 等でも示されている。 ↩︎ ↩︎
Ramon Pacheco Pardo, Shrimp to Whale: South Korea from the Forgotten War to K-Pop, Oxford University Press, 2022, Chapter 4 "Freedom and Crisis 1988–97." ↩︎
"Seo Taiji and Boys", Wikipedia(活動期間1992–1996年、メンバーはソ・テジ、ヤン・ヒョンソク、イ・ジュノ)。ヤン・ヒョンソクは1996年にYGエンタテインメントを設立している。 ↩︎ ↩︎
Roald Maliangkay, "The Popularity of Individualism: The Seo Taiji Phenomenon in the 1990s," in Kyung Hyun Kim and Youngmin Choe eds., The Korean Popular Culture Reader, Duke University Press, 2014, pp.296–313. ↩︎
Hyunjoon Shin and Pil Ho Kim, "Birth, Death, and Resurrection of Group Sound Rock," in The Korean Popular Culture Reader, Duke University Press, 2014. ↩︎
「시대유감」「서태지와 아이들」各項、韓国語版ウィキペディア。1995年9月の不可判定、ボーカルを抜いた収録、署名運動と政党の関与、1996年6月7日の公演倫理委員会廃止、同年7月10日のシングル発売までの経緯。 ↩︎ ↩︎ ↩︎
「문화의 지배: 시장개방, 경제위기와 문화산업정책의 정치경제」(文化の支配:市場開放、経済危機と文化産業政策の政治経済)。市場開放、1997年外貨危機、文化産業の経済的価値への認識、法制化という流れを一続きの政治経済過程として分析している。 ↩︎
Hyeong-ki Kwon, Changes by Competition: The Evolution of the South Korean Developmental State, Oxford University Press, 2021, Chapter 7 "Asian Financial Crisis and Transformation of Korean Capitalism." ↩︎
「2000년대 초 한국 영화 정책의 특징적 경향」(KCI掲載論文)、および文化産業振興基本法(1999年2月8日、法律第5927号)に関する国家記録院の解説。1998年10月19日発表の「新文化観光政策」で2001年までに政府予算の1%を文化分野へ充てる方針が示され、翌年の法制定につながった。 ↩︎
「이수만 SM의 스타 현지화 전략으로 3차 한류 도전」韓国経済新聞、2011年6月19日。および「한류, 현재의 K-pop을 만든 CT와 미래를 열어갈 SMCU」ソウル大学アジア研究所 アジアブリーフ、2021年。 ↩︎
John Lie, K-Pop: Popular Music, Cultural Amnesia, and Economic Innovation in South Korea, University of California Press, 2015. ↩︎
Gil-Sung Park, "Manufacturing Creativity: Production, Performance, and Dissemination of K-pop," Korea Journal, Vol.53, No.4, 2013, pp.14–33. DOI: 10.25024/kj.2013.53.4.14 ↩︎ ↩︎
Youjeong Oh, Pop City: Korean Popular Culture and the Selling of Place, Cornell University Press, 2018, Chapter 3 "Image Producers: The (Re)Production of K-Pop Idols." ↩︎
Josephine Yu Qin Goh and Sheau-Shi Ngo, "An analysis of SM Entertainment's ownership structure amidst its global-local expansion," Media, Culture & Society, 2024. ↩︎
The Dong-A Ilbo, "Global songwriters fuel K-pop songwriting camps," 2 February 2026. および "'Composed in Sweden, recorded in Korea': K-pop production goes global", The Korea Times, 2026年3月17日。海外作曲家によるデモ制作と韓国側A&Rによる選定・作詞という工程。 ↩︎
「공동 음악창작 특성에 관한 연구: 송라이팅 캠프를 중심으로」(共同音楽創作の特性に関する研究——ソングライティング・キャンプを中心に)。 ↩︎
"Lee Sung-soo", Wikipedia。海外出版社主催のソングキャンプに招かれた経験を韓国に持ち込み、SM内に通年運用可能な体制を作ったとされる。 ↩︎
"K-Pop Sound, American Style: Marcan Entertainment Is The K-Pop Production K-Pop Agencies Turn To", KultScene, 2015年。 ↩︎
"Happiness (Red Velvet song)" および "Next Level (Aespa song)", Wikipedia。後者はA$ton Wyldの同名曲のリメイク。 ↩︎
Maria A. G. Witek et al., "Syncopation, Body-Movement and Pleasure in Groove Music," PLOS ONE, 9(4), 2014, e94446. DOI: 10.1371/journal.pone.0094446。中程度のシンコペーションが身体運動欲求と快感を最も高めるという結果を報告している。 ↩︎ ↩︎
Tomas E. Matthews et al., "The sensation of groove engages motor and reward networks," NeuroImage, Vol.214, 2020, 116768. ↩︎
Jan Stupacher, Michael J. Hove and Peter Vuust, "The Experience of Musical Groove: Body Movement, Pleasure, and Social Bonding," in Performing Time, Oxford University Press, 2023. ↩︎ ↩︎
"Daddy Cool (Boney M. song)", Wikipedia。フランク・ファリアンが鉛筆で歯を叩いてイントロのリズムを作ったこと、男声パートを本人が歌い、ボビー・ファレルは録音では歌っていなかったこと。 ↩︎ ↩︎
"Shanghai Honey", Wikipedia(2003年7月16日発売、オリコン最高5位、240,831枚)。 ↩︎
「盗作?ORANGE RANGEをバカにするな!」BASEMENT-TIMES ほか、当時の類似指摘と論争を回顧した記事。本記事は個々の疑惑の当否について判断しない。 ↩︎
Hyunjoon Shin, "K-pop as a Modular Assemblage: The Critique of 'Cultural Hybridity' and 'Glocalization'," Media & Society, Vol.33, No.4, 2025, pp.135–181. DOI: 10.52874/medsoc.2025.11.33.4.135 ↩︎ ↩︎
「에스파의 재해석한 '시대유감'」MKスポーツ、2024年1月15日/「에스파가 서태지 노래를?」CBSノーカットニュース、2024年1月。SMリマスタリングプロジェクトの一環、カリナとBewhYによるラップメイキング参加。 ↩︎